かつて人類は記録を残すという意味でこの彫刻という手を用いていました。例えば、古いものでは氷河時代の壁画や、文字の出現後あちこちに散在する石碑など。更に中国古代の木簡やエジプトのロゼッタ石などもこの範囲に入るでしょう。しかしこれら記録としての彫刻は絹、パピルス、紙などの出現により次第に廃れ、美術としての彫刻だけが近世までに命脈を保っているといえるでしょう。
近世に入り機械技術の発達により、これが彫刻の世界にも波及して彫刻機械の発明につながります。この機械の出現は彫刻の世界に精巧性、均一性、さらには量産性をもたらしました。
ある時期には芸術であった彫刻が、この時から再び実用性を復活させるようになりました。彫刻機械の性能が高まり、それを駆使する人が熟練するにしたがって、芸術的部分の占める割合はさらに低くなりました。そして数値制御(NC)装置を使った彫刻機が出現した現在、もはや美的感覚を要求されるもの以外に芸術的部分は皆無に近くなりました。このため実用としての彫刻を従来の造形美術としての彫刻と区別するために、「工業彫刻」という名称が誕生したのです。
こうして工業彫刻は、その後各分野に応じて技術的に細分化されながら発展してきます。金型、モデル、金属彫刻、製品彫刻、プラスチック、目盛などの各部門となり、それぞれ異なった角度から独自の技術を創造しました。またこれが新しい機械や装置の開発とともにさらに新しい加工方法を生み出し、精密化されながら進歩を続けています。
